「住宅ローン控除(こうじょ)」「住宅ローン減税(げんぜい)」という言葉はお家探しをしている人なら聞いたことがあるでしょう。正式名称は、住宅借入金等特別控除という制度、簡単に言えば「一定の条件で住宅ローンを組んで家を購入、増改築等をした場合、年末の借入残高に応じて税金が還付される」という制度です。
このブログ記事では税制改正前に現時点での住宅ローン控除の仕組みや計算方法について簡単に解説していきます。
目次
・住宅ローン控除の概要
・新築の住宅ローン控除のほうがお得?
・中古住宅の住宅ローン控除の適用条件は?
・控除を受けるには?
住宅ローンを借りて、お家を購入したり、増改築をした場合、年末調整や確定申告によって住宅ローンの借入残高の1%が還付されます。
ちなみに、これは給付ではなく既に支払っている税金の一部が戻ってくることがポイントです。基本的には所得税からの控除ですが、所得税だけでは控除しきれない場合には、住民税からも控除を受けることができます。
住宅ローン控除の控除期間や年間の控除上限額などは、購入した際、建物に消費税がかかったかどうかで大きく異なります。
新築住宅など建物に消費税がかかる場合
新築住宅や中古マンションなどの中でもリノベーション物件など、売主が法人で建物に消費税がかかる場合、控除期間は10年間+3年間の13年間、住宅ローン控除の限度額は480万円となります。
中古物件を購入した際、売主がリノベーション業者など、法人であればこちらに該当します。
住宅を取得した1年目~10年目までは、住宅ローンの年末借入残高のうち4,000万円を限度額として、そのうちの1%が控除されます。
住宅ローン控除の説明でしばしば「最大400万円」というフレーズを耳にすることはありませんか、これは取得した建物(新築住宅等)に消費税がかかる場合で、毎年40万円の控除を10年間受けたときの金額を指しています。(4,000万円 × 1%×10年間 = 400万円)
11年目から13年目にかけては控除額の計算方法が変わり、控除額は次のA,Bのうちいずれか少ない方の金額になります。
A. 住宅ローンの年末残高×1%
B. 建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3
ですので、新築住宅などの場合は、控除期間が13年間、最大480万円が控除されることになります。
中古住宅など消費税がかからない場合
次に、消費税がかからない場合です。主に個人が売主の中古物件では、消費税がかかりません(消費税は法人との取り引きに課税され、個人間売買では発生しないため)。
住宅を取得した1年目~10年目までは、住宅ローン年末借入残高の2,000万円を限度額として、そのうちの1%が控除されます。
なお、個人間売買など消費税がかからない場合は、10年間から13年間への控除期間の延長は対象外です。
そもそも+3年間の控除は消費税増税に伴う消費意欲減退を防止する策だからです。
ですので最大控除額は、2,000万円 × 1%×10年間 = 200万円となります。
「新築は最大480万円も控除されるのに中古物件では最大200万円の控除というのは不公平だ」と思うかもしれません。控除額だけを比較すると確かにそうですが、ほとんどの新築住宅は取得する際に消費税10%を負担しています。たとえば、建物価格が3,000万円の場合、10%の消費税として300万円の支払いが発生しているのです。
新築マンションや新築戸建てなどは販売価格が総額表示(本体価格と消費税分の価格が分かれていないこと)のため消費税を実際にいくら払っているのかを見落としてしまいがちですが、消費税の負担額も考えると、新築と中古での最大控除額の違いについても納得が行くのではないでしょうか。
住宅ローン減税制度のまとめ
消費税がかかる場合 消費税がかからない場合
(主に新築住宅) (主に中古住宅)
年末借入残高の上限 4,000万円 2,000万円
(5,000万円)
控除期間 13年 10年
最大控除額 (1年目~10年目)400万円 200万円
※()内は認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合
※居住時期が令和元年10月~令和4年12月に関して
住宅ローン控除は、賃貸に出すような投資目的での購入や一人暮らし向けのコンパクトな物件では、控除による恩恵を受けることができません。
住宅ローン控除の適用には以下のような条件があります(国税庁 住宅借入金等特別控除より)。
築年数が物件によって違う中古住宅においては、3つ目の条件、その物件が耐震性能を有しているかどうかが特に重要なポイントですので購入段階できちんと確認しておくようにしてください。
1.自ら居住すること
その住宅を取得してから6か月以内に入居して、控除を受ける年の12月31日まで居住していることが必要です。居住実態は住民票により確認します。
2.床面積が40㎡以上であること
コンパクトな一人暮らし向けの物件などは恐らくこの床面積で適用の対象外になってしまうのではないでしょうか。
減税対象となる住宅の床面積は40㎡以上である必要があります。この面積の測定方法は、一般的な広告に掲載される面積とは異なる場合があるため、必ず不動産登記簿上の面積で確認しましょう
。なお、登記簿の面積は、戸建住宅の場合は壁心面積(壁厚の中心からの面積)、マンションの場合は内法面積(壁の内側の面積)となっています。
3.耐震性能を有していること
中古住宅の場合、築年数によっては1981年6月1日に施行された改正建築基準法、いわゆる新耐震基準を満たしていない場合があります。住宅ローン控除の適用を受けるためには次のいずれかの条件に適合していることが要件となります。
木造住宅なら20年以内に建築されていること
鉄筋コンクリート造なら25年以内に建築されていること
耐震基準適合証明書を取得済みの住宅であること
既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得済みの住宅であること
既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
4.返済期間が10年以上あること
住宅ローンの返済期間が10年以上のローンでなければ、適用することができません。
また、無利子又は0.2%に満たない利率による勤務先からの借入金、親族や知人からの借入金は住宅ローンの適用の対象となりません。
5.年収が3,000万円以下であること
合計所得金額が3,000万円以下の年でなければ、住宅ローン減税は適用できません。ここでいう「合計所得金額」とは、給与だけでなく、退職金、株の売買による利益や配当、先物取引に係る雑所得の金額、山林を譲渡して得た金額などを含みます。
また、減税対象の住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、年間所得が「1000万円以下」であることが適用要件となります。
6.特定の制度と併用していないこと
居住した年のその前後2年間(通算5年間)に「3,000万円特別控除」や「居住用財産の買い替え特例」を受けていない必要があります。